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2025-07-17

活動報告「"夜に交じる人たち"について」

お世話になっております。
藤田です。
7月16日に僕がスタッフをしているバンド colormalから3rdアルバム「夜に交じる人たち」がリリースされました。

先月も報告しましたが、僕はこのアルバムにアートディレクション・デザインとして携わっております。
コンセプトアルバムでもあるのでどういうことを考えて写真を選んだのかとか全体的なシチュエーションとかもここでお話出来たら良いなと思っていま文章を打っています。

※こちらの記事は「夜に交じる人たち」のCDをご購入になった方を主に対象としております。
もちろんこれから買おうと思っている方や配信で既にお聴きになられた方にも読んでいただけると嬉しいですが、CDをご購入いただいた上でこちらを読んでいただけるとより良いかと思われます。
予めご了承ください。

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◆はじめに—本作について・共同制作者について

各プレスでも発表している通り、本作は「無敵の人」を主人公に据え、一曲目の「放銃」を起点に社会との繋がりから外れてしまった人が自身を振り返り、逃避行する一夜を追っていくといったコンセプトアルバムになっております。

アートディレクションとフィジカルのデザインを担当したのは僕ですが、写真は大阪でのワンマンライブ「獣たち」のフライヤーにも写真を使わせてもらったカメラマンのタカギタツヒトくんです。
タカギくんとは、昨年の東京ワンマンの打ち上げで初めてちゃんと話したのですが、その際に同年代だと言うことがわかり意気投合。
今回初めて一緒にちゃんと仕事が出来て嬉しかったですね。
その上、僕はいままで素材を渡されて配置するみたいな仕事はしてきましたが、アイデアを一から練って撮影に赴き…みたいなディレクションは初めてだったので気合十分で望みました。

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◆デザイン概要と撮影について

先述した通り、今回はテーマがかなりセンセーショナルなものだったので、デザインの中心をどこに置くかというのをしっかりタカギくんと打ち合わせをしました。

制作メモとして、家永さんからキーワードをいただき、その中からテーマを考えていきました。
以下がそのキーワードです。

・モノクロ・ワントーン(先行曲・フライヤーと統一)
・獣(非理性的・本能的な象徴)
・光(前作や歌詞との関連)
・植物園(モノクロでの象徴性・ヴィジュアル要素)
・懐古・幼少期(アルバム後半のテーマ)

流石にそのまま直接的な形で表現していくことにはお互い抵抗があったので、アルバム後半のテーマでもある「懐古・幼少期」をデザイン中心に置きながら、夜が持つ静寂と孤独、ノスタルジックな風景を主人公の心情と重ねていくようなディレクションに持って行きました。

撮影は二日間。ロケーションは団地と公園。
この団地はcolormalの一作目「merkmal」からの引っ張ってきました。

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◆ジャケット写真

幼少期をテーマに置いたのが一目でわかるジャケットになりました。
このアルバムを一つの物語として考えた時、皆さんならこのジャケット写真をどこに差し込みますか?

これはそれぞれあると思うので、明確な答え合わせとして考えて欲しくないのですが、僕はこのジャケットを一番最後で想定しました。

僕は最後の「東京」という曲にこのアルバムのエピローグ的な立ち位置と、「起こった事件も、誰かの葛藤も、たちまち朝が来てしまうとまるでそんなものは無かったかのように生活が続いていく」というあっけなさみたいなものを感じていました。

「東京」を聴き終わった時、この写真が目に入りエピローグのラストカットとしてこの一枚に物語が集約されるというのが一番理想で、表ジャケットに起用するのを一度躊躇った理由はそれです。
本当はクレジットに使用する予定でメンバーさんに共有しました。

蓋を開けてみればメンバーさんがとても気に入ってくれたので満を持して起用しましたが、意外だと思ったと共に「良いもの」としての感覚はちゃんと近いんだなと思って嬉しくなりました。

そして既に家永さんがSNSにて投稿してましたが、今作のジャケットに使用した靴は僕が実際に幼少期に履いていた靴を使っています。
今作は絶対にこれを使いたかった。
カメラマンの地元で撮影し、デザイナーが実際に履いていた靴というメタ的な視点を以って幼少期の回想に説得力を持たせています。

今作、表ジャケットに文字情報を一切入れなかったのは完全に僕のエゴです。
申し訳ありませんが。
「名盤は写真だ」だの「名盤には余計な情報は必要ない」だのなんだのとSNSで喚いておりましたが、これに関しては気が大きくなって誇張こそしてはいますがずっと同じ考え方で進んでいます。
これは僕がJ-POP育ちだからなのが大きく起因していると思います。
特に「名盤は写真だ」に関しては信藤三雄と木村豊が悪いです。

とはいえ、最近のビジュアルデザインは「独創的」という言葉に甘えてると感じる瞬間が多分にあり、その外側にあるものに対しては当たりが強いとか以前に見えてない現状があると思っています。
そういったものに対しての自分なりのアンサーでもあることは確かです。

時流やコンテンツ、カルチャーの中にあるものではなく、いつの時代でもただそこに在る普通の表現。
僕がしたかったデザイン表現の核というのはそういった普遍の中にあるんだろうなと改めて再確認した次第です。
CDsみたいなところに所属していて何を言うかという感じではありますが、CDsの良いところはこういうダルいやつにも寛容でいてくれるところです。

なお、裏面は「merkmal」をオマージュしたものをどこかに挟みたいというcolormal強火のファンとしてのお気持ち採用でした。
タイミング的にメモリアルな盤でもあるので。
気づいたあなた、ニヤッとしたあなたはなかなか"通"ですね♪

文字の大きさは写真の空気感を崩さないように小さく、目立たないような配置にしました。
まぁフィジカル買ったら帯に曲目も記載してるのでね…

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◆歌詞カードについて

今作、何度も言うように空気感のパッケージを常に意識しました。
メンバーさん的には動物の写真も使いたかったみたいですが、社会的な繋がりから外れた人間の心情を投影するために、あえて無機質で物静かな写真たちをチョイスしています。
全体的にどこか他人事のようで自分の中に確実に礎として存在している景色。
そんな写真たちです。

ただ、これは全部タカギくんが尽力してくれたお陰なので、タカギくんに会うことがあったらみんなでベッタベタに褒めましょう。最高の写真本当にありがとう。

また、歌詞カードの文字についてですが、今回前作の「diode」よりもページ数を多めにご用意していただいたので、各楽曲も余裕を持って配置出来ました。Oaiko本当にありがとう。

デザインとして、今作一番気にしたのは歌詞カードなんですよね。
ちょっと込み入った話になりますが、行間には人間が読みやすい間隔というのが存在していて、主に小説などの縦組みでのレイアウトにて使われるものなのですが、今回はそれを応用して歌詞を配置しています。
文字数pt×1.8ptだった気がします。
今作特に歌詞に注目して見て欲しい、歌詞カードを手に取ってじっくり音楽と対峙して欲しいという気持ちを込めてこのような配置にしています。

そこまで伝わっているかどうかはわかりませんが、歌詞カードをじっくり読みながら聴いてくれた人の投稿を見てかなり嬉しくなりました。
皆さん本当にありがとう。

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◆リリースされてから

本当に感慨深いです。
別にいままでも自分のデザインしたCDがタワレコに並ぶことはありましたが、やっぱりcolormalのCDが自分が通っていたタワレコに並んでる姿というのは感慨深い以外の言葉が見つかりませんね。しかも僕がディレクションをしたものが。
やっぱりcolormalって自分の中でも特別なんだなって。
じゃないとスタッフまでやってよなって。

アートディレクター的な立ち位置で初めて共同制作をしましたが、かなり自分の性に合ってると思いました。
やっぱり専門でやってる人と一緒に相談をしながら制作するのって大変だけど楽しかった。
こういう仕事がドンドン増えていったらどうなっちゃうんだろうな。

このアルバムのアートワークは、この五年間の活動の中で一番良いものが出来たと自負しています。
何年経っても胸を張ってあの頃のベストワークだと言えるようにこれからも制作を続けていきます。
やりたいこと沢山ですし、いまのスタンスを表明したまま規模感が大きくなっていけたらもっと楽しいだろうなと思います。
まだまだ伸びしろ。やっていきますよ。

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◆最後に

この記事が、アルバムを視聴する際の新たな発見に繋がってくれれば幸いです。
また、これをきっかけにCDを買ってみようかなと思ってくださればこれまた幸いです。

最後になりますが。
colormalのメンバーの皆様、流通を手伝ってくださった町田さんを始めとしたOaikoの皆様、一緒に制作をしてくれたタカギくん、何よりご購入いただきアートワークまで楽しんでいただいた皆様。
本当にありがとうございます。

引き続き、colormal 3rd Album「夜に交じる人たち」を楽しんでいただけたらとスタッフながらに思います。

では、また月末にお会いしましょう。

藤田

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